仏像ってちょっと興味あるけど、どう楽しんでいいのかわからない。
そんな方の背中を「仏像の楽しみ方は自由でいいんだよ!」と押してくれる、この連載。
今回のテーマは「仏像って、つまり何?」
これさえ知っておけば仏像がだいたい分かる!? そんな永久保存版な本企画。
仏像に恋い焦がれる二人組「ほっとけーきず」が、手取り足取り、仏像の基本をレクチャーしてくれます。
仏像初心者が、リアル仏とご対面?!
今回は、仏像初心者を招きました。香港出身のカイさんです。
中学時代、坂本龍馬に憧れて日本語を学び始め、昨年来日。最近の悩みは、不必要に若く見られるので「強い女になりたいこと」だそう。
わたし、なんで今日呼ばれてるのかわからないです〜〜〜
何も知らない彼女の後ろに、なにやら怪しい影が……。
ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
突如現れた二人に衝撃を受け、崩れ落ちるカイさん。
登場したのは、ほ、仏さま!?
仏像に恋い焦がれる二人組「ほっとけーきず」
田中ひろみ(Ver.聖観音菩薩)
イラストレーター&文筆家。奈良市観光大使。丸の内はんにゃ会代表。「仏像なぞり描き」シリーズ(池田書店)「時間を忘れて 仏さま塗り絵(東邦出版)」など著書は約60冊。
公式ホームページ▶︎ http://usagitv.com/
みほとけ(Ver.阿弥陀如来)
仏像に一番近いアイドルを経て、仏のピン芸人へ。2019年にはTHE W、R-1グランプリに出場。仏像になりきる「仏ものまね」を生み出した、仏クリエイター。
Twitter▶︎ https://twitter.com/mihotoke_chan
1から学ぶ仏像のいろは!仏には種類がある!?
役者が揃ったところでさっそく本題へ……
えっ、待って!目を合わせられない!今すぐ逃げ出したいんですけど……
逃がしませんよー!改めまして、私が阿弥陀です。
今日はよろしくね。私は、観音です。
は、はい……あの、仏像ってよくわからないんですけど、二人は何かの仏像なんですか?
私は、鎌倉にある高徳院の大仏。阿弥陀如来です。
私は、京都 大法恩寺の聖観音菩薩です。観音菩薩も阿弥陀如来も仏像なんですけど、種類が違うんですよ。
種類……?
まずは仏像の種類から。ほっとけーきずによる仏像レクチャーが始まります。
仏像の種類その1:如来は、誰もが目指す理想の姿
紙とペンを使って、描かれたのは「ピラミッド」。
仏像はたくさんありますが、大きく4種類に分けられます。上から、如来(にょらい)、菩薩(ぼさつ)、明王(みょうおう)、そして天(てん)。
一番偉いのが、如来ということ?
釈迦如来(イラスト:田中ひろみ)
そう。そもそも仏像は仏教の開祖であるお釈迦さまの姿をかたどったのが始まり。すべての仏教徒が目指す姿が「如来」なんです。そして、わたしも如来です。
阿弥陀如来のカメラ目線……
冠もネックレスも身に着けていないシンプルなお姿なのは、如来が悟りを開いているからなのよ。
お釈迦さまは俗世から離れて質素な暮らしをしていたから、服は布一枚。自分が苦しみから解放されるにはどうすればいいのか、考え抜いた末に辿り着いた姿が、これだったんです。
なるほど、なんだかありがたく見えてきました……!
続いては、ピラミッドの2段目、菩薩の説明に入ります。
仏像の種類その2:菩薩は、おしゃれな王子様
観音菩薩(イラスト:田中ひろみ)
上から二番目の菩薩は如来になるために修行中なんです。お釈迦さまは元々、インドの貴族、王子様だったの。だからそのモチーフが引き継がれて、菩薩は、インドの貴族の姿をしているんですよ。
貴族だから、とにかくキラキラピカピカ……
それでも菩薩さまは、かなり修行を積んでいるから徳は高いんです。ちなみに、徳って、簡単に説明すると、悟りを開いて如来になるための経験値のようなものです!
経験値を集めるって、ゲームみたい!
そうそう。そのゲームの最終ステージまで来ているのが菩薩です。最後のお題、つまり最後の修行が、私たち生きている人々を救うこと。人々を救うために寄り添ってくれているから、姿も私たち寄りなんです。ほら、髪の毛もぶつぶつじゃないし。
普通、一番上にいる如来がきらびやかになりそうだけど、そんな理由があったんだ……!
仏像の種類その3:明王の怖いお顔には理由がある
不動明王(イラスト:田中ひろみ)
カイさん、たまに怖い顔をした仏像って見たことありますか?
ネットで見たことあるかも……なんであんなに怖い顔をしているのですか?
いい質問ですね!ここまで紹介してきた如来や菩薩は、修行して悟りを開いたり苦しみから解放されるための道を、私たちに優しく教えてくれるんです。でも、世の中には怒らないと言うことを聞かない人っているじゃないですか。
たしかに、不良少年とか……
そう!上から三番目の明王は、そういう言うことを聞かない人を、怖い顔で正しい道に導いてくれるんです。
え〜!学校の先生みたいですね。仏像には、優しい先生と、怖い先生がいるということですか?
そうそう。明王は、生徒指導部の先生って感じかな。如来の化身と言われていて、言うことを聞かない人がいると、怒り顔で炎をメラメラと燃やしながら私たちを導いてくれます。優しい校長先生と一緒にいる、体育会系の怖い先生みたいな。
仏像の種類その4:天は元々、インドの神々だった
毘沙門天(イラスト:田中ひろみ)
最後は天。元々はインドの神様だったので、色々な見た目をしています。吉祥天や弁財天のように女性の姿だったり、顔が動物で体が人間だったりとか。
インドの神話を仏教が取り入れたんです。悪さをすることもあったインドの神様が「仏さまの言うことを聞きます」と言って、仏教を守るガードマンになったんですよ。
なるほど、仏像にはいろんなストーリーがミックスされてるんだ……全4種類、なんとなくわかった気がします。
じゃあ、ちょっとおさらいしてみましょう!
如来は、偉い人。菩薩は、お金持ち。明王は、怖い先生。天は……愉快な仲間たち!
おーーーーーすごい!ちゃんと理解できてる!
じゃあ、ここで問題!カイさんは奈良の大仏は見たことがあるんですよね。奈良の大仏は4種類のうち、ど〜れだ?
え〜っと、髪の毛がくるくるだったから、あれは如来ですか?
そうです!正解!!!
好奇心旺盛なカイさんの急成長ぶりに、二人も大盛り上がり。
ここからは、カイさんの溢れる好奇心から生まれた仏像に関する疑問をまとめてご紹介します。
仏像初心者が気になる質問に仏が答えます!
仏像初心者の疑問にほっとけーきずが答えました。
如来・菩薩・明王は性別がないとされています。特に如来は、胸はふっくらしているけどひげがあったり、髪形もパンチパーマだったりして、性別がまったくわかりません。
モデルになっているのがお釈迦様だから男性かなって気もするけど、菩薩はちょっと女性的に描かれることは多いかな。
明王は、怖い顔をしている上に筋肉モリモリで、男性的な表現が多いかな。仏像の種類によって、表現が限りなく女性的だったり男性的だったりするから難しいけれど、どちらでもないんです。だからこそ、男女どちらにでも心を寄せられるのかも。
ちなみに、天はインドの神様だったときの名残で性別があります。女性の神様だったら女性として、仏教に取り入れられているんですよ。
お釈迦様の身長は、約4.8mあったと言われていて、同じ大きさの仏像が造られました。4.8m以上の大きさの仏像が大仏と呼ばれます。
ほら、ガンダムとかも大きい方が頼りがいがありそうじゃないですか。だから、大きな災害などで国民が不安がっている時に、国民を安心させるために大きな仏像を造ったんです。
大きい方がパワーがありそうな気がするからね!
仏ものまねで「強い女」へ変身!?
ここで、仏像に興味を持ってきたカイさんに、ほっとけーきずからある提案が……
仏像は4種類に分けられるって話をしましたけど、その中で如来・菩薩・明王が仏さまと呼ばれているんです。私が如来で、先生が菩薩、ということは明王だけいないんですよね……
明王……どこかにいないかしら……
えええ、露骨ですね! う〜ん、別にものまねしてもいいんですけど、家族に知られたら「何のために日本に行ったの?」って言われそうで。
いやいやいや。カイさんは、強い人になりたいんですよね。それなら明王がぴったりですよ!
明王をよく観察してなりきったら、気持ちも吹っ切れて自信が湧いてくるかもよ?
う〜ん、こんなわたしでも、強い人間になれますか?
願って修行すれば、誰でも明王になれるものなのよ!
よし!もう決めた!やります!
なんだかとてつもなく「丸め込まれている感」がありますが、どうやらやる気になったカイさん。
初めての仏ものまねがスタートします!
やってみよう!仏ものまねであのヒーローに
まずはものまねの対象になる明王をよく見て観察します。
明王の髪型、くるくるのパーマヘアになっているのわかります? 手には刀と、煩悩を捕まえる羂索(けんさく)を持っています。
かっこいい!ワンダーウーマンみたいじゃないですか!!
スーパーヒーローを目指して、まずは髪形から。小さなお団子を結ってパーマヘアを再現するようです。
なんだか、きゃりーぱみゅぱみゅみたいですね。明王は原宿系ですか?
この髪形のことを巻髪(けんぱつ)って言うの。
明王は原宿じゃなくて
、成田山系かな!
ツッコミのいない世界の恐ろしさに震える取材班をよそに、続いてはメイクを施していきます。
ダメだ……顔が近い!笑っちゃいます。
間近でメイクを担当するみほとけの顔面に耐えられないカイさん。
隣では、菩薩が母のように優しくヘアスタイルを整えています。明王の力強い眉毛が宿ってきました。だんだんとワンダーウーマンの風貌へ……
最後は衣装と武器を整えて。二人がかりで仕上げていきます。
さぁ、果たして、今日学んだばかりの仏像初心者でも、不動明王になれるのでしょうか?
完成〜〜〜!不動明王できました!
その出来栄えは・・・
ふっふっふっふっふ、楽しくて変な笑いが出ちゃう〜〜〜〜〜〜
ウンウン!不動明王だ!ワンダーウーマンな感じも出てますよ!
可愛いのにちゃんと怖いのがいいよね。元々の可愛さが際立ってる!
人生初のコスプレが不動明王だなんて、最高の経験でした!普段はへらへらしてて睨んだりしないので、表情も新鮮。もうこれからどんな困難があっても負けない気がします。
今日からあなたも仏さま!?
最後にピラミッドを振り返っておきましょう!
仏像の種類は、如来・菩薩・明王・天の4種類。一番上が理想の姿を現したシンプルな「如来」。二番目が人に寄り添うゴージャスな「菩薩」。三番目が怖いお顔の「明王」。四番目はインドの神々が取り入れられた「天」。
そして、今回は特別に、如来・菩薩・明王のお三方にも順番にお並びいただきました!
仏像入門編、いかがだったでしょうか?
仏像の楽しみ方は人それぞれ。ただ仏像の前に座ってじっと眺めるもよし。写仏するのもよし。
でも、ほんの少し知識があれば、さらに深い洞察を味わえるかもしれません。
時に熱く、時にゆる~く仏になりきる、仏ものまねも、いつか仏像の楽しみ方のスタンダードになるかも?
一人でも多くの人が仏像に恋い焦がれてくれたら。ほっとけーきずの活動は、まだまだ続く。次回もお楽しみに!