今回のテーマは「傷つき・傷つけ」です。
「もう、人と関わりたくないと思ってしまうんです」
これは、今号の編集会議で、あるメンバーからこぼれた言葉です。
人とぶつかり、傷を重ねるにつれて、そのように感じてしまう人も少なくないのかもしれません。
できることなら、傷つきたくないし、誰も傷つけたくない。それは誰もが抱く率直な思いでしょう。
だから、人との関わりから少し距離を置くことも、自分を守る大切な手段の一つです。
社会もまた、やさしく繊細になりました。
「こういう言い方は避けるべき」「ここにはあまり踏み込まない方が良い」
そんなふうに、たくさんのマナーやルールが、私たちを不必要な衝突から守ってくれるようになりました。それはとてもありがたいことです。
ただ、その一方で、気づけば私たちは「当たり障りのない」関係の中にいることが増えたようにも感じます。
傷つかないけど、深くは繋がらない。そんな関係が、ちょっと寂しい感じもするのです。
傷つくのは怖いけれど、人との繋がりが薄れるのもやっぱり寂しい。
そんなどうしようもない想いを抱えて、今号では、「傷つき・傷つけ」との向き合い方を考えていけたらと思います。
vol.65