「仏ものまね」やってみた Vol.1 東寺の帝釈天は柴咲コウ似?

みなさん、「仏像」をどのように楽しんでいますか?

仏像をじっくりと鑑賞する見仏や、仏の姿を描く写仏、仏像が作られ守られてきた歴史を知るなど、仏像の楽しみ方は、実に様々。

今回ご紹介するのは、新しい仏像の楽しみ方、その名も「仏ものまね」です。

(制作:みほとけ)

そもそも、仏さまを目指すのが仏の道、ならば!

ビジュアルから寄せてみよう!そうすれば仏さまの気持ちも分かるかも!?

と、そんな勢いたっぷりで楽しんでいる「仏ものまね」の制作現場をのぞいてきました。

仏像に恋い焦がれる2人組「ほっとけーきず」誕生!

仏ものまねを披露するのは、今回新しく結成された仏像大好きユニット「ほっとけーきず」のお二人。

田中ひろみ(写真左)

イラストレーター&文筆家。奈良市観光大使。丸の内はんにゃ会代表。「仏像なぞり描き」シリーズ(池田書店)「時間を忘れて 仏さま塗り絵(東邦出版)」など著書は約60冊。▶︎公式ホームページ

みほとけ(写真右)

仏像に一番近いアイドル。アイドルとしての活動に加え、2018年には仏のピン芸人としてTHE W、R-1グランプリに出場。仏像になりきる「仏ものまね」を生み出した、仏クリエイター。▶︎Twitter

今回は「仏ものまね」のパイオニアであるみほとけが、初挑戦の田中先生を引っ張りつつ、協力して仏を目指します。

「東寺の帝釈天像」は柴咲コウ似?

(イラスト:田中ひろみ)

今回、二人がものまねに選んだのは東寺の帝釈天(たいしゃくてん)

キャー!帝釈天っていったら仏界きってのイケメンよねー!かっこいいー!

東寺は、恋に落ちるスポットNo.1ですもんねぇ!

女子人気NO.1はこの帝釈天か興福寺の阿修羅くらいじゃない?

仏像を見て、すでにハイテンションな二人。

東寺の講堂には21体の仏像が安置されており「立体曼荼羅」として有名です。3月26日(火)から6月2日(日)まで東京国立博物館で開催される特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」では、その立体曼荼羅から史上最多の15体が公開されます。

中でも注目を集めているのが、今回ものまねする国宝 「帝釈天騎象像」です。

(二人はすでに拝観されたようです。流石。)

象に乗っている帝釈天って珍しいよね。実は、手に持っている金剛杵(こんごうしょ)と顔は後付けなの。のちに、慶派の仏師が修復したんだって

慶派は、鎌倉時代に奈良を中心に造仏界で力を持った仏師の一派。康慶、運慶、快慶など名前に慶の字が使われることから、後に慶派と呼ばれるようになりました。写実的な肉体表現や美しい顔立ちが、慶派の仏像の特徴と言われています。

さすが、数々の仏像を描いてきた田中先生、細部に宿っている仏像の物語を熟知されています。

知らなかったー!だからこの帝釈天はイケメンなんですね。言われてみると、髪の毛が繊細なところが慶派っぽい

やっぱり、慶派の仏像って、頬に張りがあって若々しいよね〜

仏ものまねは顔貌をいかに寄せるかがポイントなので、問題はこのピチピチ度をどう表現するか、ですね

顔が大事なのはイラストも一緒よ。どうやって寄せていく?

この眉毛の形じゃないですかね。帝釈天の眉毛って、まっすぐで柴咲コウみたいじゃないですか?

ほんと!柴咲コウだ!似てる!

道筋が見えたのか、自信ありげなみほとけ。田中先生をリードしつつ、進めていきます。

仏ものまねで、人間もゾウになれる?

仏像の特徴を把握したら、続いて持ち寄った材料を広げていきます。

一般的なメイク道具や蓋つきの小さな容器、キャラクターのぬいぐるみ、大量の布。フリーマーケットのような光景です。

「これ何に使うの?」と思えるアイテムが多い中、みほとけ曰く、壺は薬師如来が持つ薬壺に、ぬいぐるみは仏像の光背にあしらわれた化仏(けぶつ)に使えるんだとか。すごい、本当に「仏を作る」んですね!

さて、これらのアイテムを「仏ものまね」にどうやって活かしていくのか、作戦を立てていきます。

帝釈天の髪形はどうなってたっけ?

頭の上で髪を結って、噴水状になっています。長さが足りない分は布を使って髪の毛に見立てましょう

へぇ、なるほど!

慣れた手つきで地毛を結うみほとけの技に、一同感心。

続いては、胸元の飾りを考えます。「ガチャガチャのカプセルを使いましょう」と言うみほとけに、「じゃあ、お花を挿しちゃおう!」と応える田中先生。早くも抜群のコンビネーションを見せる二人です。

みほとけがものまねするのは、まさかの帝釈天が乗る「象(ゾウ)」。
牙は絶対にバナナ」と、コンビニで入手したバナナを手にしています。

普段「仏ものまね」をするときはすぐに制作にとりかかるそうですが、今回は田中先生とイメージを共有。泉のごとく湧き出るアイディアを設計図に落とし込みます。

果たして、先生は仏さまへ、みほとけは象になれるんでしょうか?

仏ものまね、いよいよ制作スタート!

先生、まずは色画用紙で宝冠を作りましょう

 

了解〜!

・・・(ジョキジョキジョキ)

・・・(ジョキジョキジョキ)

ハサミの音だけが小気味よく響きます。手を動かす二人には、迷いが一切ありません。

あ!王子っぽい!宝冠の柄もこだわりますか?

柄?見えないからいいですよー。えーっと、あとは何を作るんだっけ?

どこまで仏の解像度を上げるのか、もはや一種の「悟り」に至っている先生
「仏ものまね」には、作り手の性格も表れるのでしょうか……。

田中先生は胸元の花飾りにとりかかります。その隣で、みほとけは象の鈴を取り付け中。
時に雑談をしながら、次々とアイテムを完成させていきます。

制作したアイテムと布で仏に接近!

衣装はどうすればいいかな?

甲冑と衣のベースは布で作るのがいいんじゃないかな

着物みたいに布をまとってから、袖の部分を留めていきましょう。この布ヤバい!強そう!

帝釈天の写真を確認しながら、襟元や袖を整えていきます。一枚の大きな布がジャケットのように見えてくるから驚きです。微調整を繰り返し、衣を再現します。

甲冑から出ている袖のひだを再現したいんです。仏像は衣が重要ですから

それっぽくなってきた!

二人だとクオリティが上がっていいですね!

続いては、甲冑をフィッティング。色画用紙を切り抜き模様を入れた甲冑部分を、実際に肩に当てます。

こんな感じでいいのかな?

トテモイイデス!!!

急にテンションが上がってなぜかカタコトになったみほとけ
画用紙をカットして甲冑のサイズを合わせます。切り方は非常に雑ですが、細かい部分まで模様を入れるなど、作業を取捨選択するバランスが絶妙です。

「仏ものまね」のポイントは、「っぽく」見える部分をしっかり作ること。田中先生によると、イラストのデフォルメの感覚と似ているんだそう。

「ほっとけーきず結成は必然!」と盛り上がる取材陣をよそに、二人は作業を続けていきます。

袖を輪ゴムで留めてブラウジング。胸元の飾りを取り付けたら、今度はヘアメイクです。

お客様、今日はどうされますかー?パーティーですかー?

パ、パーティーです・・・

突然の美容室コントに、戸惑いつつもしっかり乗る田中先生。コントを挟みつつ、地毛をモールで結い上げて髻(もとどり)を作ります。続いてはメイクです。

柴咲コウ仕上げていきますー

ええ〜、できるものならしてみてください

人はみんな、柴咲コウになれるんです!誰もが仏性(ぶっしょう)を抱えているのと一緒です!

みほとけの熱にあてられて、取材に同伴していたお坊さんが「一切衆生悉有柴咲コウだ…」と漏らしてしまうくらい現場は謎の一体感に!

みほとけが100均アイテムでつくる仏像メイク「東寺の帝釈天編」

「仏ものまね」の肝は、何と言ってもメイク。今回は特に、素材が活きた仏像なので、全体的にウッディーに仕上げていきます。

1. 色味(自我)を消す

唇に乗せている色は落としましょう。コンシーラーを使って自眉も消します。

2.眉で強い意志を表現

ポイントは柴咲コウにも通じる目元。眉間を狭くして、仏像の雰囲気に近づきましょう。

3.アイラインを入れて男前に

思い切りよくアイラインを入れます。このひと手間で、さらに柴咲コウ味をプラス。

4.チークで運慶仏のハリを手に入れる

ふっくらさせたい部分にチークを。くるくる塗って立体感を出していきます。

5.完成★

リップペンシルやアイライナーを使って唇を縁取ります。最後に、帝釈天の額にある第三の目を書き入れましょう。

ついに「仏ものまね」完成へ

メイクを終えた田中先生は、凛々しいお顔立ち。ただ、その表情は初めてお化粧をした少女のようにうれしそうです。その隣で、今度はみほとけが象のものまねを始めます。

四つん這いになるので、象っぽい布を巻き付けてください!

象っぽい布、ってこれ?

先ほどから未知の言語を繰り出す二人。「象っぽい布」って、そんなのあるんですか!?

ぞ、象だ……。不思議と象に見えてきました。
布で作った鼻には鈴がついており、動くたびに鈴の音が響きます。

先生、バナナを紐でつけてもらえますか?

あ、やばい。私、これ以上動いたら色々取れてくる…

それ、仏ものまねあるあるですね

テープや紙でアイテムをつけているため、動くたびに壊れてしまう仏ものまね。すごい、仏教の「無常」を体現しています

動けなくなった先生が隣で見守る中、みほとけの象ができあがっていきます。

バナナは紐でくくりつけ、牙に。両肩を象の大きな耳に見立て、布をあしらいます。
あとは、帝釈天が座る部分に赤い布をかければ……!

ぞ、象だ!象が完成しました!
仏ものまねで、人は象になれるんですよ!

さて、先ほど、もろもろ崩壊しかけていた先生の帝釈天は……

この完璧な仕上がり!
帝釈天の「柴咲コウ味」がきちんとメイクで表現されています。

あと残すは、象とドッキングするのみ……!

私、象です!動けないので乗ってください!

はい!ちょっと待って!

お手本を確認しながら表情やポージングを整えて…

こ、この完成度!
たしかに、これは帝釈天だ!!!!!!

さらに加工を施せば…

神々しい……いや、仏々しい……!
もう、完全に東寺の帝釈天像そのものじゃないですか!

実際に、東寺の帝釈天と並べてみると……

このクオリティ……!
人間ってここまで仏に近づけるんですね……!
これが仏ものまね……二人のなりきり度に脱帽です。

おしまいに

「ほっとけーきず」による初めての「仏ものまね」。
最後に、仏になりきった後の二人に感想を聞いてみました。

楽しかったー!思っていたよりはスムーズだったかな

人は象にもなれるし、柴咲コウにもなれる!自信つきますよね。達成感でいっぱいです!

仏に近づこうと奮闘する「ほっとけーきず」の「仏ものまね」。ちょっと興味が湧いてきませんか?

ビジュアルを寄せていく作業ですが、その本質はブッダを目指して修行していく仏教の考え方と似ているかも。続けて観察していけば、新たな発見がありそうです。

ということで、これからも見逃せない、仏像に恋い焦がれる2人組「ほっとけーきず」の「仏ものまね」はフリースタイルな僧侶たちで連載化が決定しました
次はどの仏像をまねるのでしょう。ぜひ、次回もお楽しみに。